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【独占】NTT澤田社長に聞く。トヨタと目指す「日本型」スマートシティ基盤とは

共同会見で握手を交わす トヨタ自動車 豊田章男社長(左)とNTT 澤田純社長(右)
(写真提供: NTT)

2020年3月、日本電信電話株式会社(以下、NTT)とトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、業務資本提携を発表した。

スマートシティ構想を実現するため、プラットフォームを共同で構築・運営する方針だ。

日本を代表する大企業同士が協力してつくる「日本型」スマートシティ事業とはどのようなものなのか。NTT澤田社長にオンラインでインタビューを行なった。

(取材日: 4月2日 インタビュアー: 井上 佳三 / 齊藤 せつな)

トヨタ自動車は今年1月に同社の東富士工場(静岡県裾野市)跡地を利用した「Woven City(ウーブンシティ)」構想を発表。「モビリティ・カンパニー」への変革を目指し、ソフトウェア・ファーストのクルマ、そして社会システムと深く結びついたクルマづくりを掲げている。

他方、NTTは福岡、札幌、横浜や千葉などの自治体・企業とスマートシティ実装に向けて協業、国外でもラスベガスやサイバージャヤ(マレーシア)で取り組みを進めている。

両社は2017年にコネクティッドカー分野での協業を開始。その一方で自動車・情報通信の両分野の市場が目まぐるしい変化を続けている。これまでの事業基盤だけではなく新たな協力関係の構築を目指す必要が生じ、今回の提携へと至ったという。

中でもスマートシティ構想は、都市の機能を高めてサービスを効率化し、地域の課題解決や付加価値の創出を実現するために重要な事業だと位置付けられている。

両社はスマートシティ構想を実現するため、コアとなるプラットフォームを共同で構築・運営する。前述のWoven Cityと、東京都港区品川エリア(品川駅前のNTT街区の一部)で先行して実装するべく、取り組みを進めている。

そのほかにもNTTは、今年3月に地図情報サービス大手の株式会社ゼンリンと、インフラ管理やMaaS・自動運転・スマートシティなどの分野における資本業務提携の合意を発表している。

NTTがトヨタと提携にいたった背景とは? 両社はどのように事業を進めていくのか。また、スマートシティ事業を推進する上で重要な視点とは何なのか。NTT澤田社長へオンラインインタビューを行った。

モビリティ産業に関わる企業の触媒へ

―NTTは、エッジコンピューティング開発などを通じて、モビリティ領域への布石を打ってきた印象があります。今回のトヨタ自動車との提携によって、更にモビリティ領域に深く踏み込んでいくのでしょうか。

澤田氏: NTTの中心となっているのは、やはり通信事業です。しかし、二年前に私が社長に就任した時は、固定電話の市場が縮小したように、現在の主力事業であるモバイル通信も将来的に市場が変化するだろうと推測をしていました。

そこで、事業ポートフォリオを変える、もしくは新規領域を拡張する必要があると考え、「スマートワールドの実現」というビジョンを掲げました。情報通信技術を駆使して多種多様なデータを蓄積し、それらを利活用して新たなシステムやサービスを導入することで、社会に貢献するビジョンです。

中でも、「スマートシティ」が最も大きい領域です。2018年から、私がラスベガスでのスマートシティの実証プロジェクトを率いてきたこともあり、ここで培った技術要素を全世界に広めていきたいと考えています。

モビリティ領域に関しては、今までNTTが強みとしていた訳ではありません。今後も、モビリティ産業や製造業そのものに直接踏み込んでいく考えはなく、私たちの役目は、あくまでもモビリティ産業に関わる企業に対して、「B to B to X」の形で支援することだと思います。

NTTとトヨタは、かねてから自動運転領域などで共同研究を進めていますね。今回、業務提携にまで進んだ背景を教えてください。

澤田氏: NTTとトヨタの間では、数年前からコネクティッドカーの基盤づくりの共同研究を行なってきました。その中でNTT側はNTT研究所、グループ会社のNTTデータが、ソフトウェア開発を担っていました。

(中略)

トヨタは、今までコネクティッドカー、つまりクルマ側からの発想で事業展開を行ってきました。しかし、今後社会に対してさらなる貢献を果たすためには、クルマを社会基盤の一部として考えるべきだという発想に転換しています。

その流れもあり、NTTがパートナーとして適していたようです。私たちも、「スマートワールドの実現」というビジョンを掲げさまざまな事業拡大を図っています。考え方や今後の展開で接点が多く、協業という形に至りました。

IOWN構想の実装を目指す

―スマートシティ事業は、それぞれのお膝元と言える東富士や品川で先行実装するとの発表がありました。両社はどのような役割分担で進めていくのでしょうか。

澤田氏: 大きく分けるとモビリティ領域はトヨタ、ICT・エネルギー・情報流などに関してはNTTという役割分担を考えています。物流に関しては両者が関わります。また、都市のマネジメント機能についても一緒に開発を進めます。現在、チームを編成しているところで、具体的な事業内容をこれから検討していきます。(取材:2020年4月上旬)

―御社の技術要素として、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

澤田氏: 私たちは、かねて情報通信技術に関するブレイクスルーである「IOWN(アイオン=Innovative Optical & Wireless Network)」構想を提唱していました。この構想を実現するためには、重要な3つの要素があります。

まず伝送・交換処理を全て光信号で行う「オールフォトニクス・ネットワーク」があります。フォトニクス技術をエンド to エンドに適用して、低消費電力、大容量、低遅延なコミュニケーション基盤の実現を目指すものです。トヨタも興味を持っており、今回の提携の背景になっています。

次に、「デジタルツインコンピューティング」。前述のデジタルツインをさらに発展させ、モノ・ヒトのインタラクション(相互作用)をサイバー空間上で自由自在に再現・試行可能とするものです。

気候や人口の変動を地球・宇宙規模でシミュレーションし、都市の課題発見・解決への活用などが可能になります。また、ヒトのデジタルツインから得られる住民の行動パターンや人間関係マップと、地理・交通情報等を組み合わせた仮想社会を構築し、高精度な感染症・疾病の拡散予測・抑制にも貢献できるようになると考えています。

そして、これまで挙げた低消費電力・大容量・低遅延なコミュニケーション基盤や、大規模なモノ・ヒトのインタラクションを実現するためには、さまざまなリソースを適切に選択し、利用することが重要です。そのためには、さまざまなデータを連携する基盤が必要となります。その基盤となるのが、「コグニティブ・ファウンデーション」です。

東富士や品川での実証を踏まえ、これらの技術要素を日本のさまざまな都市で利用してもらいながら、より高度なまちづくりを進める際の一つのきっかけになれればと思っています。

澤田社長のインタビュー全文では、
・冒頭のNTTとトヨタが提携した背景についての詳細
・ラスベガスのスマートシティ事業で、なぜGAFAではなくNTTが選ばれたのか?
・日本でスマートシティ構想を実現するための課題
以上のトピックスについても語られています。

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